1970年の亡霊
 ホワイトボードの前に立った柿本二尉は、拡大された地図に赤いピンを刺した。

 緊張を全身に漲らせた隊員達は、その位置を凝視している。

「いよいよ我々の出番だ。既に練馬の普通科連隊と、工科大隊が災害出動の名目で爆破現場の修理復旧に当たっているが、我々にいつ命令が下ってもいいようにと、内務班が極秘にテロ組織のアジトを調べ上げてくれた。それがこの場所だ。この駐屯地からは然程離れていない。各自の任務役割分担については、後程ブリーフィングするが、その前に内務班の園田二尉から話がある」

 一気にそこまで話すと、柿本は傍らに控えていたもう一人の尉官に続きを促した。

「内務班の園田二尉だ。東部方面軍幕僚作戦科からの指示で、かねてより内偵していたが、新たなテロの準備の為にテロリスト達がここに潜伏しているのを突き止めた。彼等はロシア製の自動小銃やRPG(ロケットランチャー)で武装しているという報告も入っている。容赦はするな。躊躇いは犠牲を生む。内務班が、危険を冒してまで居場所を突き止めたのだ。殲滅せよ。いいな!」

「はい!」

 隊員達が一斉に声を上げる。

 満足そうに頷いた園田は、

「本作戦の目的は、急襲殲滅だ。一人残らずテロリスト達を葬ってやれ」

 そう言ってブリーフィングルームを出て行った。

 続いて柿本は、各分隊長に作戦指揮書のコピーを手渡し、戦闘員の細かい配置や、突入部隊の選別を急いだ。



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