1970年の亡霊
 陽は落ち、辺りはすっかり暗くなった。

 古びた倉庫のような建物の前で佇んでいた男は、予定時刻を告げる腕時計を確認し、予め準備していた場所へと移動した。

 廃材や屑鉄などでカモフラージュされたその場所には、固定された軽機関銃があった。

 引き金の辺りに小型の器械が取り付けてあり、男は片手に発信機を持った。

 スイッチを入れ、作動するかどうかを確認する。

 大丈夫とみるや、別方向から現れた仲間の二人と合流した。

「準備は?」

「大丈夫です」

「射線の範囲をきちんと固定したか?」

「二度、アングルを確認致しました。隊員達が自分から射線に飛び込んで来ない限り、犠牲者は出ない筈です」

「よし。中の様子は?」

「そちらも問題ありません」

「AK(カラシニコフ…ロシア製自動小銃)とRPG(ロケットランチャー)は?」

「はい。指示通り倉庫内に」

「起爆装置のスイッチは、間違っても突入時に入れてはならん」

「心得て居ります」

「うん。では、最終配置に着け」

 男達は素早い身のこなしで散った。同時に数百メートル先から、エンジン音が聞こえて来た。
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