1970年の亡霊
停車を命じた柿本は、各自のヘルメットに取り付けられた小型マイクの最終確認をさせた。
「アルファ(A部隊の略語)は右翼から進出、ブラボー(B部隊)は左翼。チャリー(C部隊)は私が指揮し、中央から進む」
柿本が言い終わると同時に、耳に装着されたイヤフォンから、
「ラジャー!」
と聞こえて来た。
約百メートル前方に、目標の廃墟があった。
雲が流れているせいか、月が時折翳り、深い闇になる。
だが、夜間訓練をいやという程こなして来た彼等なら、わざわざナイトスコープを使うまでも無い。
街中と違い、明かりらしいものは無く、襲撃する者にとっては好都合だった。
周囲を藪と小高い山に囲まれた場所に、その建物はあった。
周辺に遮蔽物は無い。
生い茂った草木だけが、隊員達を隠してくれる。
ゆっくりと、蝸牛のように匍匐前進し、全員が五十メートル近くまでに接近した。
建物の中から、微かに明かりが漏れている。
内務班からの情報では、テロリスト達の人数は十二、三人らしい。
「アルファ、ブラボー、援護位置に着け」
小隊長の柿本が小型マイクにそう言った瞬間、前方から激しい銃撃を受けた。
「アルファ(A部隊の略語)は右翼から進出、ブラボー(B部隊)は左翼。チャリー(C部隊)は私が指揮し、中央から進む」
柿本が言い終わると同時に、耳に装着されたイヤフォンから、
「ラジャー!」
と聞こえて来た。
約百メートル前方に、目標の廃墟があった。
雲が流れているせいか、月が時折翳り、深い闇になる。
だが、夜間訓練をいやという程こなして来た彼等なら、わざわざナイトスコープを使うまでも無い。
街中と違い、明かりらしいものは無く、襲撃する者にとっては好都合だった。
周囲を藪と小高い山に囲まれた場所に、その建物はあった。
周辺に遮蔽物は無い。
生い茂った草木だけが、隊員達を隠してくれる。
ゆっくりと、蝸牛のように匍匐前進し、全員が五十メートル近くまでに接近した。
建物の中から、微かに明かりが漏れている。
内務班からの情報では、テロリスト達の人数は十二、三人らしい。
「アルファ、ブラボー、援護位置に着け」
小隊長の柿本が小型マイクにそう言った瞬間、前方から激しい銃撃を受けた。