1970年の亡霊
 いきなり銃撃を受けた隊員達は、一瞬パニックになり掛けた。

 幾ら厳しい訓練を積んで来たとはいえ、実弾の雨の中に晒されるのは初めてだ。

 まだ射撃命令が出ていないにも関わらず、何人かの隊員が応射をしてしまった。

「慌てるな!無駄に撃つんじゃない!」

「ミニミを、ミニミで支援して下さい!」

 乱れ飛ぶがなり声が、各自のイヤフォンで反響した。

 柿本は自分が冷静にならなければと、何度も言い聞かせた。

「敵弾の着弾位置は!?」

「着弾は後方!」

 少し冷静になってみると、敵はこちらの所在を判ってはいないようだ。目くら滅法で撃っているだけ。

「大丈夫だ!目くら撃ちだ!敵射線の死角から回り込み、一斉に撃ち方始め」

 落ち着き払った柿本の声に、隊員達は冷静さを取り戻した。

 訓練と寸分違わぬ動きで、彼等は標的に向かった。

 一人が動くと、別な者が援護射撃をする。隊員達の放った銃弾が、正確に射線の中心に吸込まれて行く。

 一番先頭の者が、二十メートルまで接近した時、突然建物の内部で爆発が起きた。

 火花と瓦礫が四方に飛び、隊員達は地面に頭を目一杯潜らせた。


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