1970年の亡霊
 爆発はその後三度起こり、地響きで地面に伏せていたにも関わらず、身体が持ち上げられる程の凄まじい衝撃だった。

 漸く爆発が納まったが、火災と黒煙で、隊員達は瓦礫と化した建物に近付く事が出来なかった。

 三十分後、爆発跡を検証した隊員達が目にしたものは、ばらばらに散ったテロリスト達の肉片と、何丁かの破壊された武器であった。

 柿本は現場を検証し、生存者が居ない事を確認すると、内務班の園田に報告を入れた。

「テロリスト達は、我々に包囲されて自爆したと思われます。遺体は爆発の為、四散して居り、人数の確認までには至って居りません。ですが、現場の状況から考えまして、生存者はゼロ、逃亡者も居ないと思われます」

 柿本がそう報告すると、園田は満足気に任務の労を労った。

 園田との無線を切ると、副官の仁科三尉が寄って来て、

「部下達は全員無事です。二名だけ、爆発時に飛来した瓦礫で負傷しましたが、掠り傷程度ですから、損害とは言えません」

「そうか。無事で何よりだった」

「それにしても、自爆するとは思いませんでした」

「ああ。まったくだ」

「我々の奇襲をいち早く察知し、銃撃して来た時には、正直覚悟しましたが」

「うむ」

「しかし、諦めの早い連中でしたね」

 仁科三尉の言葉に、柿本は何度も肯いた。


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