1970年の亡霊
 柿本達の対テロ特殊部隊が現場確保してから十分後、園田二尉が率いる内務班数名がやって来た。

 彼等は、警察の現場検証のように、破壊された倉庫跡をブルーシートで囲い、遺体や遺留品の捜査に当たった。

 その間、役目を終えた隊員達は、来た時と同様に目立たぬよう帰路に着いた。

 対テロ部隊の姿が見えなくなると、百メートル程先の藪から、三人の男達が内務班に合流した。

 対テロ部隊が急襲する直前に、リモートコントロールの軽機関銃を設置していた男達だった。

「ご苦労様でした」

 園田が軽く頭を下げる。

「少し爆薬が多過ぎたかも知れない。これだと、用意した証拠物品がきれい過ぎて不自然過ぎないか?」

 年嵩の男が、園田に一番危惧していた点を伝えた。

「いえ、その辺は問題無いと思います。この状況を直接見た者は、我々だけですから」

「持ち込んだものと、実際のものが一致するよう、上手くやってくれ」

「心得て居ります」

「間も無く警察が来る筈だ。頼むぞ」

「はい」

 そう言って三人の男達は、園田が用意した一台の装甲ジープで現場を去って行った。

 機動隊員を中心とした習志野警察がやって来たのは、それから十五分後の事だった。


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