1970年の亡霊
「国内ではどうだ?今の日本で、あれだけのテロを行える組織は存在していないだろ?」

「ええ。例のカルト教団の残党にしても、今はそれだけの力はありませんし、過激派なら尚更中国を狙わない」

「自分達の犯行をカモフラージュする為に、わざと狙ったとは考えられないか?」

「それは無いでしょう。テロを実行する者達に共通している点は何だと思います?」

「何だ?」

「自己アピール……。テロリストは必ず犯行声明を出します。まあ、例外があるとすれば、私も柏原さんもNOと思っている北がそれですけどね」

「確かに。となると、今までそっちのアンテナにも引っ掛からなかった新しい組織って事か?」

「個人的にはそう思っています」

 そう言ってから、河津は何かを思い出したように、

「いや、まさか……」

 と独り言を呟いた。

「ん、何だ?」

「いえ。何の根拠も無い事なので……」

「構わない。話せよ」

「でも、ちょっと、とっぴ過ぎる……」

 再び押し黙った河津の口が再び開かれるのを、柏原は辛抱強く待った。

 河津は、自分で言い掛けていながら、口にする事を躊躇った。


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