1970年の亡霊
川合俊子は三枝の後から採用された民間登用者だ。
今年で三十四になる三枝よりも七つも年下だが、何処か子供っぽさの抜け切らない彼に比べ、数段落ち着いているものだから、実際の年齢を知らない者から見ると、彼女の方が年上に見える。
彼女本人も三枝を年上とか先輩といった者に対するような態度を微塵も見せない。
ただ、彼の仕事に対する能力に関しては、はっきりと口にこそ出さないが尊敬していた。
しかし、このところの三枝は、以前ほどの能力を発揮せず、課内では少しずつ浮いた存在になっていた。
川合俊子の前職は銀行員で、本店のコムセン(コンピューターで顧客や貸付等のデータ管理を担当する部署)でオペレーターをしていた。
彼女がサイバーパトロール課へ転職しようと思い立った動機は至って単純で、テレビドラマの女性刑事物を観て憧れたからだそうだ。
根は割りとミーハーな所があるのかも知れない。
その川合が、しきりに話し掛けて来た。
三枝は話の大部分を聞き流し、日課である闇サイトの掲示板をチェックしていた。
「……ちょっと、人の話位ちゃんと聞いてよ」
「え?」
「ああ、もう!あのね、この書き込みをどう思うかって聞いてんの」
パソコンのモニターを反転させ、川合俊子が指し示した。
今年で三十四になる三枝よりも七つも年下だが、何処か子供っぽさの抜け切らない彼に比べ、数段落ち着いているものだから、実際の年齢を知らない者から見ると、彼女の方が年上に見える。
彼女本人も三枝を年上とか先輩といった者に対するような態度を微塵も見せない。
ただ、彼の仕事に対する能力に関しては、はっきりと口にこそ出さないが尊敬していた。
しかし、このところの三枝は、以前ほどの能力を発揮せず、課内では少しずつ浮いた存在になっていた。
川合俊子の前職は銀行員で、本店のコムセン(コンピューターで顧客や貸付等のデータ管理を担当する部署)でオペレーターをしていた。
彼女がサイバーパトロール課へ転職しようと思い立った動機は至って単純で、テレビドラマの女性刑事物を観て憧れたからだそうだ。
根は割りとミーハーな所があるのかも知れない。
その川合が、しきりに話し掛けて来た。
三枝は話の大部分を聞き流し、日課である闇サイトの掲示板をチェックしていた。
「……ちょっと、人の話位ちゃんと聞いてよ」
「え?」
「ああ、もう!あのね、この書き込みをどう思うかって聞いてんの」
パソコンのモニターを反転させ、川合俊子が指し示した。