1970年の亡霊
「局長、外事課の河津捜査官が面会したいと申して来て居りますが」

「河津?外事課の河津と言ったらテロ対策課だろ?」

 手代木はこの後の予定を確認し、

「爆破テロに遭ったサイバーパトロール課の事でも聞きに来たのか?十分なら時間を作れると言ってくれ」

 と、取次ぎに来た秘書官に告げた。五分ほどして応接間へ行くと、河津が身動ぎもせず待っていた。

「総務部監査局局長の手代木です」

「外事課テロ対策課の河津です」

「君の名前は何度か耳にした事はあるが、こうして顔を合わすのは初めてになるのかな?」

「きちんとお話をさせて頂くという意味では、初めてになります」

「その君が、所属違いの私に一体何の用かね?」

「先ず、これからお話する内容は他言しないとお約束して頂けませんでしょうか」

「話を聞く前から、いきなりキナ臭い切り出しだな。私の職域に関する事ならYESだが、そうじゃなければNO」

「監査局のお仕事とは関係ありません。ですが、現在兼務されておられる方とは、大いに関係があります」

「やはりな。だが、爆破テロを受けた当時の実況見分調書は、既に終わっていると思うが、まだ何か調べる事があるのかね?」

 それには答えず、河津は一冊のファイルを出した。
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