1970年の亡霊
暴虐の牙
岡田幸則は、要良雄が買って来たお好み焼きに舌鼓を打ちながら、広げられた図面を見つめていた。
「食べるか見るか、どっちかにしないか」
要良雄が眉をしかめながら言っても、彼は無表情に箸を進めた。
「しかし、日本に帰って来れば多少は涼しいかと思ったが、十月になってもこの蒸し暑さはなんなんだ」
要がじっとりと汗ばむ首筋をタオルで拭いながら、誰に言うともなく愚痴を溢した。
「大阪はこんなもんさ。けど、ゴラン高原の方が暑かっただろう?」
と、岡田が言った。
「日差しこそ肌を焼くようだったが、高地だったから湿気は無かったよ。夜なんか寧ろ寒かった位だ」
「次のミッションが終わる頃は、すっかり秋らしくなるさ」
「そのミッションだが、どういう段取りで行く?」
岡田は、図面を要の方へ差し出した。
「侵入は、五キロ離れたこの変電所から。地下ケーブル用のトンネルが、滑走路の真下まで続いている。真っ暗なトンネルの中で迷子にならなければ、そう時間は掛からずにミッションは終わる」
「話だけ聞くと、まるで子供の使いに行くようなものだな」
岡田は、自分が図面に記した赤い点と線をじっと見ながら、
「油断は禁物さ」
と言って、要を戒めた。
「食べるか見るか、どっちかにしないか」
要良雄が眉をしかめながら言っても、彼は無表情に箸を進めた。
「しかし、日本に帰って来れば多少は涼しいかと思ったが、十月になってもこの蒸し暑さはなんなんだ」
要がじっとりと汗ばむ首筋をタオルで拭いながら、誰に言うともなく愚痴を溢した。
「大阪はこんなもんさ。けど、ゴラン高原の方が暑かっただろう?」
と、岡田が言った。
「日差しこそ肌を焼くようだったが、高地だったから湿気は無かったよ。夜なんか寧ろ寒かった位だ」
「次のミッションが終わる頃は、すっかり秋らしくなるさ」
「そのミッションだが、どういう段取りで行く?」
岡田は、図面を要の方へ差し出した。
「侵入は、五キロ離れたこの変電所から。地下ケーブル用のトンネルが、滑走路の真下まで続いている。真っ暗なトンネルの中で迷子にならなければ、そう時間は掛からずにミッションは終わる」
「話だけ聞くと、まるで子供の使いに行くようなものだな」
岡田は、自分が図面に記した赤い点と線をじっと見ながら、
「油断は禁物さ」
と言って、要を戒めた。