1970年の亡霊
香川が堀内の視線に気付き、
「ん?どうした?」
と尋ねた。
「この人……」
「ああ、秋の人事異動やら何やらで、新たな名簿を作成しなきゃならなくてね。訂正やら削除やらで追われているんだ」
「雄治さん、ちょっとこの人の履歴、見せて貰っても構わないかな?」
「それって、捜査か何かで?」
「うん。この垣崎二佐なんだが、二ヶ月位前に奥さんから捜索願が出ていてね」
「捜索願?まあ、そういう事ならいいけど」
と言いながら、香川は小首を傾げ、
「二ヶ月前だと、退官した後に蒸発とかしたのかな?」
「ちょっと待ってくれ。退官って?」
堀内が香川の言葉を聞いて、いきなり素っ頓狂な声を上げた。
「ほら、ここに記録されているけれど、今年の六月末日付けで退職届けが出されている」
香川の説明を聞いて、堀内は画面の日付を確認した。
おかしい。退職という話は初めて聞いた。妻の明子からは勿論の事、自衛隊側からもそういう話は一言も出て来なかった。
垣崎剛史二佐は、自分の意思で失踪したという事なのだろうか。納得出来ない思いが、灰色の雲のように胸の中で広がった。
「ん?どうした?」
と尋ねた。
「この人……」
「ああ、秋の人事異動やら何やらで、新たな名簿を作成しなきゃならなくてね。訂正やら削除やらで追われているんだ」
「雄治さん、ちょっとこの人の履歴、見せて貰っても構わないかな?」
「それって、捜査か何かで?」
「うん。この垣崎二佐なんだが、二ヶ月位前に奥さんから捜索願が出ていてね」
「捜索願?まあ、そういう事ならいいけど」
と言いながら、香川は小首を傾げ、
「二ヶ月前だと、退官した後に蒸発とかしたのかな?」
「ちょっと待ってくれ。退官って?」
堀内が香川の言葉を聞いて、いきなり素っ頓狂な声を上げた。
「ほら、ここに記録されているけれど、今年の六月末日付けで退職届けが出されている」
香川の説明を聞いて、堀内は画面の日付を確認した。
おかしい。退職という話は初めて聞いた。妻の明子からは勿論の事、自衛隊側からもそういう話は一言も出て来なかった。
垣崎剛史二佐は、自分の意思で失踪したという事なのだろうか。納得出来ない思いが、灰色の雲のように胸の中で広がった。