1970年の亡霊
「いい、この出品商品の詳細をクリックして行くと、さっき見せた書き込みに辿り着くの。しかも、この古本だか何だか知らないけど、オークション参加の所をクリックすると、自動的にサイトページが消えて、再アクセスが出来なくなるのよ。何だかおかしくない?」

「よくあるバナーの無断貼り付けじゃないの。第一、このサイトに会員登録をすれば誰でも見る事が出来るんだろ?不特定多数を狙った無断貼り付けか、別サイトへの誘導、若しくはウイルスってやつかも。どっちにしても、この程度なら犯罪とも言えない」

「自衛隊のOB会が、どうしてバナーの無断貼り付けをするの?それと、言って置くのを忘れていたけれど、このオークションサイト、普通に登録しても会員パスワードは発給されない仕組みになっていて、ただの閲覧をするにしても、必ず途中のページでブロックされるのよ」

「そういう君はどうやって入り込んだの?」

「それ、こういう仕事をしている人間にしては愚問だと思うな」

 考えてみればそうだ。

 サイバーパトロール課の課員であれば、その辺のハッカーよりは手際よくハッキング出来る。

 どんなに厳重なガードを施した書き込みでも、その大元に辿り着くのは朝飯前だ。

 書き込んだ個人のパソコンの機種と、発信場所さえ割り出せる。

「自衛隊の名前を借りた愉快犯かもよ。単なる悪戯だよ」

 興味を惹かない話題から逃げるように、三枝はトイレタイムだ、と言って席を立った。



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