1970年の亡霊
「外事部の人間は余程部下を信用してねえんだな」

 棘の含んだ加藤の言葉を聞き流すかのように、

「事が事だけに、公には捜査出来ないからね」

 と言った。

 河津の言葉を引き継ぐように、三山が身を乗り出して話し始めた。

「川合さんのコンピューターを監視して、捜査内容を外部に漏らしていた経緯が判ったの」

「情報のセキュリティに関しては本庁一番も形無しだな」

「返す言葉も無いけど、内部から手引きしていた人間がいたんだもの」

「内通者がいたのか?」

「下山課長……」

「下山って、あんたの後を継いだ課のトップじゃねえか」

「ええ。それも、直接自分がやっていたのではなく、課内の部下を使ってね」

 三山が朝岡由美子の件を説明した。

「じゃあ、その人間は同僚の監視をしていたとは知らなかったという訳か?」

「そう。巧妙にクッションを置いてね」

「下山課長が死んでしまったんじゃ、それが事実かどうか闇のまんまじゃねえか」

「その下山課長だが、三山君から話を聞いた後、いろいろ調べたのだが、どうも消された可能性が高い……」

 いきなり穏やかなではない話になり、部屋の中が一気に緊張感で包まれた。





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