1970年の亡霊
重い空気を払うかのようにして、下山課長が消されたと思われる根拠を河津が話し始めた。
「本庁が爆破テロを受けた時、爆心地点が二ヶ所あった。一ヶ所が中央交通管制室で、もう一ヶ所がサイバーパトロール課だ。その際に下山課長が殉職したのだが、爆発物は課長のデスク付近にあったと思われる。鑑識課の調べだと、他の爆破テロで使用された爆薬と違って、爆薬量が少なかったらしい。だが、その分金属片が多く検出されている」
「どういう事だ?俺は軍事オタクじゃねえから、その意味がよく判らねえ」
「対人用に改良されたもの……つまり、完全に最初から下山課長を標的にしていたのではないかと」
「成る程。下山課長の線から自分達へ繋がる事を恐れたって訳か」
「それだけではなく、課のメインサーバーの破壊もそれで叶った……こちらが調べていたデータごと吹き飛ばせたから、一石二鳥という訳になるじゃない。そこで、下山課長の経歴をいろいろ調べてみたの」
三山は自分の鞄から、一冊のクリアファイルを加藤へ差し出した。
「下山課長の経歴か何かか?」
「ええ。警察官拝命に至る経緯とか家族関係が記載されているけれど、本人欄よりも親族の欄に注目して欲しいの」
加藤がファイルのページを捲り、言われた箇所に目をやった。そこには、ボールペンで書き足された名前があった。
「……!?」
驚く加藤の顔を覗き込むようにして、
「蒔田登……。直接の血縁ではなかった為に、総務課も調査仕切れなかったんじゃないかな」
親族欄の兄に下山典孝という人物が記載されてあった。職業欄には元自衛官とあり、彼の戸籍謄本のコピーが添付されていて、何ヶ所も赤や黒のインクで訂正の二重線や名前が走り書きされていた。
「しかし、幾ら血縁じゃねえって言っても、警察学校に入る時には徹底的に調べられるだろう?」
「でも、ここまで巧妙に偽装され、関係を消されたら判らなかったのも無理無いと思う」
と言って、三山はもう一枚の書類を差し出した。
「本庁が爆破テロを受けた時、爆心地点が二ヶ所あった。一ヶ所が中央交通管制室で、もう一ヶ所がサイバーパトロール課だ。その際に下山課長が殉職したのだが、爆発物は課長のデスク付近にあったと思われる。鑑識課の調べだと、他の爆破テロで使用された爆薬と違って、爆薬量が少なかったらしい。だが、その分金属片が多く検出されている」
「どういう事だ?俺は軍事オタクじゃねえから、その意味がよく判らねえ」
「対人用に改良されたもの……つまり、完全に最初から下山課長を標的にしていたのではないかと」
「成る程。下山課長の線から自分達へ繋がる事を恐れたって訳か」
「それだけではなく、課のメインサーバーの破壊もそれで叶った……こちらが調べていたデータごと吹き飛ばせたから、一石二鳥という訳になるじゃない。そこで、下山課長の経歴をいろいろ調べてみたの」
三山は自分の鞄から、一冊のクリアファイルを加藤へ差し出した。
「下山課長の経歴か何かか?」
「ええ。警察官拝命に至る経緯とか家族関係が記載されているけれど、本人欄よりも親族の欄に注目して欲しいの」
加藤がファイルのページを捲り、言われた箇所に目をやった。そこには、ボールペンで書き足された名前があった。
「……!?」
驚く加藤の顔を覗き込むようにして、
「蒔田登……。直接の血縁ではなかった為に、総務課も調査仕切れなかったんじゃないかな」
親族欄の兄に下山典孝という人物が記載されてあった。職業欄には元自衛官とあり、彼の戸籍謄本のコピーが添付されていて、何ヶ所も赤や黒のインクで訂正の二重線や名前が走り書きされていた。
「しかし、幾ら血縁じゃねえって言っても、警察学校に入る時には徹底的に調べられるだろう?」
「でも、ここまで巧妙に偽装され、関係を消されたら判らなかったのも無理無いと思う」
と言って、三山はもう一枚の書類を差し出した。