1970年の亡霊
「丸光商事グループは判りますよね」
「それ位は世間知らずな俺でも知っているよ」
「マルミツ経済研究所というのは、丸光帝国研究所という名で戦前は兵器の研究を主にやっていた会社でね。戦後の財閥解体や、軍部に関係していた会社の解体で一旦はこの世から消えた会社だった……」
河津の後を受けるように、柏原が目の前に置かれた書類に目を落としながら話し始めた。
「戦後、朝鮮動乱が起こり、東西冷戦が始まるとアメリカの指示で警察予備隊というものが組織された」
「今の自衛隊ですね」
「ああ。スタート時は僅か五万人程の兵力だったのが、その自衛隊と名称が変わり、アメリカから余剰兵器を買い付け、ちゃくちゃくと軍隊としての様相を見せ始めた。発足当初は日本も貧しかったから、自ら戦車や大砲を作るなんて事は出来なかった。だが、当時の防衛庁幹部は一日も早く自前で軍備を装備出来るようにならなければ、真の先進国とは言えないと思っていたらしい」
「兵器国産主義ってやつですね」
「うん。最初は全てを一から国産でなんてとても無理だったから、アメリカから兵器を買い付け、同時にライセンス生産の契約を取り付けた」
「今でもジェット戦闘機なんかそうですよね」
「主力のF15とかはそうだが、今ではかなりの機種を国産でまかなっている。それら国産兵器を一手に生産している会社が、」
「丸光重工業、でしたっけ?」
「その通り。そこの出先機関としてマルミツ経済研究所は存在している。その仕事は、戦前同様、国産兵器に関する研究と試作……」
「僕から一言付け加えますと、ここは防衛省の天下り先として、政界では有名です。前政権の自由党へは、毎年かなりの額の献金があって一時は国会でも問題になった事がありました」
「そんな会社の顧問をやっているのか……」
「加藤さん、これだけじゃよく判らないでしょうけど、もう一つ面白い事実が判ったの」
「もう何を聞いても驚かないから、勿体付けずに早く教えてくれ」
それは、加藤が想像していた以上の話の内容であった。
「それ位は世間知らずな俺でも知っているよ」
「マルミツ経済研究所というのは、丸光帝国研究所という名で戦前は兵器の研究を主にやっていた会社でね。戦後の財閥解体や、軍部に関係していた会社の解体で一旦はこの世から消えた会社だった……」
河津の後を受けるように、柏原が目の前に置かれた書類に目を落としながら話し始めた。
「戦後、朝鮮動乱が起こり、東西冷戦が始まるとアメリカの指示で警察予備隊というものが組織された」
「今の自衛隊ですね」
「ああ。スタート時は僅か五万人程の兵力だったのが、その自衛隊と名称が変わり、アメリカから余剰兵器を買い付け、ちゃくちゃくと軍隊としての様相を見せ始めた。発足当初は日本も貧しかったから、自ら戦車や大砲を作るなんて事は出来なかった。だが、当時の防衛庁幹部は一日も早く自前で軍備を装備出来るようにならなければ、真の先進国とは言えないと思っていたらしい」
「兵器国産主義ってやつですね」
「うん。最初は全てを一から国産でなんてとても無理だったから、アメリカから兵器を買い付け、同時にライセンス生産の契約を取り付けた」
「今でもジェット戦闘機なんかそうですよね」
「主力のF15とかはそうだが、今ではかなりの機種を国産でまかなっている。それら国産兵器を一手に生産している会社が、」
「丸光重工業、でしたっけ?」
「その通り。そこの出先機関としてマルミツ経済研究所は存在している。その仕事は、戦前同様、国産兵器に関する研究と試作……」
「僕から一言付け加えますと、ここは防衛省の天下り先として、政界では有名です。前政権の自由党へは、毎年かなりの額の献金があって一時は国会でも問題になった事がありました」
「そんな会社の顧問をやっているのか……」
「加藤さん、これだけじゃよく判らないでしょうけど、もう一つ面白い事実が判ったの」
「もう何を聞いても驚かないから、勿体付けずに早く教えてくれ」
それは、加藤が想像していた以上の話の内容であった。