1970年の亡霊
 装甲車とジープが駐車場の入り口で停まった。

 それぞれの車両から自衛隊員が降りて来た。皆銃口を能勢三尉へ向け、いつでも撃てる構えをした。

 銃口の列を割るように、園田二尉の姿が見えた。能勢は任務を達成したという誇らしげな表情をし、園田二尉へ向かって敬礼をしようとした。

「!?」

 園田二尉の右手から銃弾が放たれた。H&K自動拳銃の9ミリ弾14発全てが、能勢三尉の身体に吸い込まれた。

 能勢三尉の死亡を確認する事無く、園田はくるりと踵を返した。

「園田二尉、カキザキ二佐からです」

 部下の一人が無線機を差し出した。

「園田です」

(大阪は予定通り終わった。そっちはどうだ?)

「こちらも予定通り……」

(現場の確保と保全に充分注意をしろ。絶対に他の部隊を入れるな)

「了解して居ります……」

(園田二尉……)

「は……」

(日野と能勢は防大の後輩だったな?)

「は……」

(私を怨んでいるか?)

「いえ……」

(怨んでも構わんぞ……)

「……そろそろ他の部隊が到着しますので、この辺で失礼します」

 園田は相手の返事も聞かず、無線のスイッチを切った。

 垣崎二佐、貴方からそんな言葉を聞きたくなかった……

 他の者達に自分の顔を見られないよう、園田は無数の灯りが点滅する海上ばかりを見つめた。

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