1970年の亡霊
 映し出されたHPには、『未来への提言と社会への還元』という、尤もらしい文言が大きく見出しになっていた。

「財団法人……せいえいかい?誠(まこと)を衛(まもる)か……功遂げて財を成した金持ちが付けそうな名前だな」

「それより、ここよ」

 三山が画面をスクロールさせて行くと、一番下に関連企業や協賛企業の社名が載っていた。

「このジャパン・トータル・ケアという会社なんだけど、所在地がJTCとして福祉法人の許認可を受けた番地と一緒なの。正確に言うと、ほんの少しだけ違うんだけどね」

「違うって?」

「不動産登記簿上では、二分割された土地なんだけど、実際に建っているビルは一つというわけ」

「つまり、同じ上物で別名義の法人許可を取っているって事か?」

「ええ」

「知能班(捜査二課)が聞いたら喜びそうな話だな。で、あのサイトの発信元はそこだという訳か?」

「残念ながら敵もさるもの。海外のサーバーを経由していたのよ」

「じゃあ、そこが例のサイトと関係しているかどうか判らないって事だ」

「ちゃあんとそこは調べたわ。海外のサーバーを経由していたのも川合さんは調べてあったの。彼女は更にそこから辿って行ったんだけど……いい、ここ」

 三山がマウスをクリックすると、画面いっぱいにコンピューターの認証記号が並んだ。

「……何処なんだ?」

「ペンタゴン」

「はあ?」

「まるで小説かスパイ映画みたいな話でしょ」

 まだ信じられないといった表情の河津を無視し、三山は更に自分のノートパソコンを開いた。



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