1970年の亡霊
 受話器を取り相手を確認しようとした瞬間、河津の耳元で手代木のよく通る声ががんがん響いた。

「え!?」

(え、じゃない!またテロだ!横浜と関空がやられたんだ!貴様の所からはまだ連絡は無いのか!?)

 そうやり取りをしていると、言っていた傍から河津のケータイがけたたましく鳴った。

 南雲課長の名前がケータイ画面に表れた。

「丁度今電話が鳴りました」

(非常召集が掛かると思う。準備して置いた方がいいぞ)

 手代木の電話を切らずに左顎で挟み、南雲からの電話に出た。

 南雲の声は動転しているのか、落ち着きが無くやたらと早口になっていた。

「たった今、手代木局長からの電話で知りました。直ぐ本庁へ向かいます。詳しい情報を揃えて置いて下さい」

(詳しくも何もまだ何も判っていない!判っているのはテロが起きたという事だけだ!)

 南雲の電話を切り、手代木ともう一度話し始めた。

「局長、大きな手掛かりを掴み掛けています。今回のテロもきっとそこに繋がっている筈です」

(確証を得てからだ。総監や長官だけじゃなく、防衛大臣と総理を納得させられるだけの確証を揃えろ。話はそれからだ!)

 有無も言わさぬ勢いで電話は切られた。やり取りをじっと聞いていた三山は、真っ青な顔をしている。

「GPSが……」

「三山、大丈夫か?」

 三山は、見つけたという言葉が続かなかった。

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