1970年の亡霊
足立の廃校を根拠としていた垣崎二佐の遊撃部隊から、存在を察知されたとの連絡を受けた鹿島二佐は、かねてから想定していたプランを電話で曽根崎政務次官に伝えた。
そのプランを聞いた曽根崎は、
(ここでも同士討ちをやらせるのか?)
と、眉をしかめた。
「犠牲が大きければ大きい程、達成される大儀の意味が国民に伝わります」
(証拠隠滅の意味合いもあるのだろうが、余りいい気分ではないな)
鹿島は曽根崎次官の言葉を聞いて、今更何を言うんだという思いが湧き、腹の中で罵っていた。
彼等は所詮、失敗しても自ら責任を取るような事はしないだろう。軍人は別だ。常に最後の責任を己の死で償う心構えでいる。
不承不承といった感がありありと伝わっては来たが、今はまだ曽根崎の力が必要だ。
「では、次官から大臣へお願い致します」
(ああ、どうせ実行部隊の選別はもう済んでいるのだろう?)
曽根崎の問いには答えず、鹿島は電話を切った。彼はそのまま横浜に居る園田の番号をプッシュした。
「うまく行ったようだな」
(はい……)
「予定より早く遊撃部隊の存在が知られてしまった」
(……)
「判っているな」
(はい……)
「今度は習志野や横浜のようには簡単に行かないと思うが、この犠牲によって我々の義挙をより鮮明に出来る……」
(はい……)
「園田、あと一歩だ。彼等や君達だけを行かせはしない。私も後に続く……」
園田の押し殺した気配だけが、鹿島の耳元で息衝いていた。
そのプランを聞いた曽根崎は、
(ここでも同士討ちをやらせるのか?)
と、眉をしかめた。
「犠牲が大きければ大きい程、達成される大儀の意味が国民に伝わります」
(証拠隠滅の意味合いもあるのだろうが、余りいい気分ではないな)
鹿島は曽根崎次官の言葉を聞いて、今更何を言うんだという思いが湧き、腹の中で罵っていた。
彼等は所詮、失敗しても自ら責任を取るような事はしないだろう。軍人は別だ。常に最後の責任を己の死で償う心構えでいる。
不承不承といった感がありありと伝わっては来たが、今はまだ曽根崎の力が必要だ。
「では、次官から大臣へお願い致します」
(ああ、どうせ実行部隊の選別はもう済んでいるのだろう?)
曽根崎の問いには答えず、鹿島は電話を切った。彼はそのまま横浜に居る園田の番号をプッシュした。
「うまく行ったようだな」
(はい……)
「予定より早く遊撃部隊の存在が知られてしまった」
(……)
「判っているな」
(はい……)
「今度は習志野や横浜のようには簡単に行かないと思うが、この犠牲によって我々の義挙をより鮮明に出来る……」
(はい……)
「園田、あと一歩だ。彼等や君達だけを行かせはしない。私も後に続く……」
園田の押し殺した気配だけが、鹿島の耳元で息衝いていた。