1970年の亡霊
 深夜にも拘らず警視庁内は騒然とした空気に包まれていた。

 警視総監の下に各部署のトップが集まり、足立区郊外で繰り広げられた銃撃戦の様子がリアルタイムで報じられていた。

 一同に衝撃が走ったのは、突然銃撃現場へ自衛隊が乱入して来た時であった。

 大会議室に設けられたスクリーンに逐次映し出された現場映像が、ヘリからの銃撃とその後に続く空挺部隊の降下場面になった途端、会議室内に怒号が渦巻いた。

「奴らは敵か、味方か!?」

「総監!至急、防衛省へ攻撃中止の要請を!」

「治安維持出動で舞い上がっている奴らに要請したところで、聞く耳など持ってはくれん!即刻、官邸に連絡をし総理へ抗議をすべきです!」

 最も怒りを顕にしたのは警備部局長と、手代木であった。

「自衛隊の治安出動など、この現場に限って言えばこちらは寝耳に水です。あれだけの銃撃を受ければ、当然、現場の捜査員達にも被害が及んでいると思われます。それに、今回の突入に関しては、自衛隊に関係する者が一連のテロに関連しているとの情報を得ての突入です。これは越権行為だけでは済みません。国家反逆罪にも等しい行為です!」

 手代木の言葉に全員が声を上げ、同調した。

「判った。至急、総理官邸へ連絡を取れ!」

 総監の言葉を受けて秘書官が走った。

 空挺部隊の攻撃が止んだのは、それから五分程経ってからの事であった。


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