1970年の亡霊
「このところの彼なんだけど……少し様子が変なの」

「変?一体どう変なんだ?て言うより、俺様からすりゃああいつは最初から変な野郎としか思えなかったけどな」

「話をちゃかさないで。彼の事をそれ程深く知っている訳じゃないけれど、あの人、元来出世欲が人一倍強い方なの」

「そういう臭いはぷんぷんさせているな」

「今回の件にしても、彼は私達が追っていた川合さんの事件を単に自分の追い掛けていた案件と絡ませる事で、捜査の打開を図っていただけだったと思うの」

「うん」

「そこには彼なりの打算があって、警察官僚としてのキャリアアップというのが根底にあった筈……」

「結構、あいつには手厳しいんだな」

「私の人物評価については問題じゃないの。手代木局長を引っ張り出したところなんか、その表れだと感じない?」

「まあ、あんたがそう言うんだから、そうなんだろうが……」

「それが、あの男を尋問していた時なんだけれど、その時たまたま彼も立ち会っていたの」

「俺が居ない時だな?」

「ええ。あの人と一緒に容疑者の尋問はした事が無いから、普段がどうなのか判らないけれど、日頃の彼の態度ではなかったの」

「どう違うって言うんだ?」

「どう言ったらいいのかな……殺しかねない、という表現が当たっているかな……」

「胸倉でも掴んで、銃口をこめかみにでも押し付けたか?」

「まじめに聞いて」
< 325 / 368 >

この作品をシェア

pagetop