1970年の亡霊
「すまん」
「私がその時感じたのは、あの人、警察官としての域を超えてしまうんじゃないかなって、そんな危うさを感じたの。絶対にそんなタイプでは無い彼がなのよ。暴走とは無縁のね」
「女の勘、みたいなやつか?」
「それもあるけれど、昔、拝命したばかりの時にある刑事を見てましたから、その時と似たような感じを受けたの」
「拝命したばかりって、おいおい、それ俺の事じゃねえか」
「それは冗談だけれども」
「何だよ、人にはまじめに聞けと言って置いて」
「とにかく、彼と一緒に居る時は、加藤さん、気を付けて上げて。思い詰めて捜査から逸脱してしまわないように」
「あんたがそう言うなら、気に掛けて置くよ」
三山の話を聞いて、加藤は河津の気持ちが判らないでもなかった。目の前で何人もの捜査員が銃弾に倒れ、その中には柏原も居たのだ。一連の首謀者をあの瞬間に見つけていたら、自分が警察官である事を忘れて、怒りと復讐心に身を委ねたかも知れない。
河津という人間に、加藤はほんの少しばかり好意を寄せた。
「さて、本日の交代時間だぜ」
「私、もう少し調べ物をしてる」
「そうか。じゃあもう一杯コーヒーを淹れて来てやるよ」
「ありがとう」
加藤が手を軽く振って、コーヒーを淹れに給湯室へ行った。
「私がその時感じたのは、あの人、警察官としての域を超えてしまうんじゃないかなって、そんな危うさを感じたの。絶対にそんなタイプでは無い彼がなのよ。暴走とは無縁のね」
「女の勘、みたいなやつか?」
「それもあるけれど、昔、拝命したばかりの時にある刑事を見てましたから、その時と似たような感じを受けたの」
「拝命したばかりって、おいおい、それ俺の事じゃねえか」
「それは冗談だけれども」
「何だよ、人にはまじめに聞けと言って置いて」
「とにかく、彼と一緒に居る時は、加藤さん、気を付けて上げて。思い詰めて捜査から逸脱してしまわないように」
「あんたがそう言うなら、気に掛けて置くよ」
三山の話を聞いて、加藤は河津の気持ちが判らないでもなかった。目の前で何人もの捜査員が銃弾に倒れ、その中には柏原も居たのだ。一連の首謀者をあの瞬間に見つけていたら、自分が警察官である事を忘れて、怒りと復讐心に身を委ねたかも知れない。
河津という人間に、加藤はほんの少しばかり好意を寄せた。
「さて、本日の交代時間だぜ」
「私、もう少し調べ物をしてる」
「そうか。じゃあもう一杯コーヒーを淹れて来てやるよ」
「ありがとう」
加藤が手を軽く振って、コーヒーを淹れに給湯室へ行った。