1970年の亡霊
「改めてこれまで公安部外事課と、サイバーパトロール課による共同捜査で得られた結果をここでお話致します……」
三山は、あるサイトの書き込みを見つけた川合俊子の話から始めた。事故死として扱われた件が、実は捜査妨害を目論んだ殺人事件であった疑いと、自ら襲撃された事件の経緯、公安部外事課でマークしていた北朝鮮工作員の大量失踪、そして、話の件が習志野で自衛隊がテロ一味のアジトを急襲したのは、全てクーデターを計画していた一味による偽装であったと述べた時には、捜査員の中から深い溜め息が出た。
「拘束している垣崎がその実行犯だったという事ですか?」
「彼は実行犯グループの指揮官だったと考えていいでしょう」
「しかし、これは阻止するにしても政治的な問題もあって、かなりナイーブな扱い方をしないといけませんね」
新たに加わった捜査員の一人がこう発言すると、
「何がナイーブだ、政治もくそもねえだろうが。あんたらみたいに年中デスクで報告書という紙の上でしか事件を見てねえ人間に、何が判るってんだ。こっちは実際に奴らの弾を浴びてんだ。思想だか何だか知らんが、単なる殺人集団じゃねえか。一気に引っ括ってしまうのが、最善の策だよ!知ったような口を利かれたんじゃ、亡くなった柏原さんやSATの連中も浮かばれねえよ」
一気に捲くし立てるように食って掛かったのは、加藤だった。慌てて三山が間に入る。
「今は揉めている状況ではありません!」
物凄い剣幕だった。
「慎重にという意味でなら、確かこの事案はナイーブな問題が孕んで居ります。相手が自衛隊の一部のみなら、そう問題ではありません。これに裏で関わっていると思われるのが、報告書にも書きました、丸光重工をはじめとした防衛産業、特に出先としてマルミツ経済研究所が挙げられます。更にこれら防衛利権に絡む一部の政治家とがあります」
「それだけじゃない。治安出動を決めた総理にも責任問題が及ぶ……そういう意味で政治的圧力が掛かる事を念頭に入れなければならん。一人の容疑者を隠密裏に検挙するのとは訳が違う。警察全体で検挙決行日まで隠し通さなければならない。こりゃあ、余程うまくやらんとな」
手代木の言葉に誰もが肯き、事の重大さを改めて認識した。
三山は、あるサイトの書き込みを見つけた川合俊子の話から始めた。事故死として扱われた件が、実は捜査妨害を目論んだ殺人事件であった疑いと、自ら襲撃された事件の経緯、公安部外事課でマークしていた北朝鮮工作員の大量失踪、そして、話の件が習志野で自衛隊がテロ一味のアジトを急襲したのは、全てクーデターを計画していた一味による偽装であったと述べた時には、捜査員の中から深い溜め息が出た。
「拘束している垣崎がその実行犯だったという事ですか?」
「彼は実行犯グループの指揮官だったと考えていいでしょう」
「しかし、これは阻止するにしても政治的な問題もあって、かなりナイーブな扱い方をしないといけませんね」
新たに加わった捜査員の一人がこう発言すると、
「何がナイーブだ、政治もくそもねえだろうが。あんたらみたいに年中デスクで報告書という紙の上でしか事件を見てねえ人間に、何が判るってんだ。こっちは実際に奴らの弾を浴びてんだ。思想だか何だか知らんが、単なる殺人集団じゃねえか。一気に引っ括ってしまうのが、最善の策だよ!知ったような口を利かれたんじゃ、亡くなった柏原さんやSATの連中も浮かばれねえよ」
一気に捲くし立てるように食って掛かったのは、加藤だった。慌てて三山が間に入る。
「今は揉めている状況ではありません!」
物凄い剣幕だった。
「慎重にという意味でなら、確かこの事案はナイーブな問題が孕んで居ります。相手が自衛隊の一部のみなら、そう問題ではありません。これに裏で関わっていると思われるのが、報告書にも書きました、丸光重工をはじめとした防衛産業、特に出先としてマルミツ経済研究所が挙げられます。更にこれら防衛利権に絡む一部の政治家とがあります」
「それだけじゃない。治安出動を決めた総理にも責任問題が及ぶ……そういう意味で政治的圧力が掛かる事を念頭に入れなければならん。一人の容疑者を隠密裏に検挙するのとは訳が違う。警察全体で検挙決行日まで隠し通さなければならない。こりゃあ、余程うまくやらんとな」
手代木の言葉に誰もが肯き、事の重大さを改めて認識した。