1970年の亡霊
「訳の判らねえヤマが増えて来たお陰で、年中その真っ只中に身を置くようになっちまった。ヤマを扱ってねえと自分が除け者にでもされている気分になるんだ。丁度、今のあんたみたいにな」
「それでも捜査に直接関わっていられればいいわよ。今の私は、博物館の事務係と一緒。化石となった過去の事件に囲まれているだけのね」
「まあ、最後まで話を聞きなって。あんた、刑事の仕事をしていて、どんな時にやっていて良かったって気持ちになる?」
「良かったとは違うかも知れないけれど、達成感みたいなものを感じた事はあるわ」
「普通の仕事と違って、遣り甲斐だの何だのって理想だけで括れる仕事じゃねえよなあ……。難事件を解決させた時は、確かに達成感みたいなもんが湧いて来るよ。けど、一々そんなもんに心を奪われてたんじゃ、次の犯人を捕り逃がしてしまう。俺が思うに、達成感とかそんなもん、クソ喰らえだね」
「加藤さんの言いたい事も判らなくはないわ。でも、じゃあ私達は何を遣り甲斐にしてこの仕事を続けて行けばいいの?義務だとか正義とかって言ったら、私いっぺんに加藤さんを嫌いになるから」
「あんまり好きになられても困るが、俺だってそんな青臭い事は言わねえよ。俺達がやっている事は、闘い、戦争だ」
「犯罪とのって事?」
「うん。国の為、大切な人を守る為に闘う兵士さ。特に現場で捜査に当たる人間は最前線で常に矢面に立っている。ところが、現場を知らん人間は己のキャリアアップや、名誉欲で事件を捉える。官僚的思考のキャリア連中にこういうのが多い」
「それ、私に対する皮肉?」
「しまった、あんたもキャリアだって忘れてたよ」
「絶対、嘘」
何処か湿り気のある笑いが二人の間を漂った。
「それでも捜査に直接関わっていられればいいわよ。今の私は、博物館の事務係と一緒。化石となった過去の事件に囲まれているだけのね」
「まあ、最後まで話を聞きなって。あんた、刑事の仕事をしていて、どんな時にやっていて良かったって気持ちになる?」
「良かったとは違うかも知れないけれど、達成感みたいなものを感じた事はあるわ」
「普通の仕事と違って、遣り甲斐だの何だのって理想だけで括れる仕事じゃねえよなあ……。難事件を解決させた時は、確かに達成感みたいなもんが湧いて来るよ。けど、一々そんなもんに心を奪われてたんじゃ、次の犯人を捕り逃がしてしまう。俺が思うに、達成感とかそんなもん、クソ喰らえだね」
「加藤さんの言いたい事も判らなくはないわ。でも、じゃあ私達は何を遣り甲斐にしてこの仕事を続けて行けばいいの?義務だとか正義とかって言ったら、私いっぺんに加藤さんを嫌いになるから」
「あんまり好きになられても困るが、俺だってそんな青臭い事は言わねえよ。俺達がやっている事は、闘い、戦争だ」
「犯罪とのって事?」
「うん。国の為、大切な人を守る為に闘う兵士さ。特に現場で捜査に当たる人間は最前線で常に矢面に立っている。ところが、現場を知らん人間は己のキャリアアップや、名誉欲で事件を捉える。官僚的思考のキャリア連中にこういうのが多い」
「それ、私に対する皮肉?」
「しまった、あんたもキャリアだって忘れてたよ」
「絶対、嘘」
何処か湿り気のある笑いが二人の間を漂った。