1970年の亡霊
洪がアジトにしたアパートは、新目白通りと青梅街道が交差した場所から、中落合方面に入った所にあった。
西武池袋線中井駅から十五分ばかり歩いた場所で、路地一本中に入っただけですっかり人影が無くなる。
洪を監視していた人間達は、アジトの半径三十メートル四方の辻々に人間を配置した。
現場から更に百メートルばかり離れた場所に停めてあった別なワンボックスカーが、ゆっくりと走り出した。
後部座席には二人の精悍な男が、全身黒ずくめの格好に身を包み、手袋までし始めた。
「手際よくやれ。いいな」
助手席に座っていた男が、振り向きもせず、じっとフロントガラスの前方を見据えたまま言った。
車はゆっくりと路地伝いに洪が入って行ったアパートの裏手へと近付いた。
同時に別の二人組が物陰から現れ、アパートの正面入り口に向かった。
正面側の二人は、手に特殊なバールと大型カッターを持っていた。
それはあっという間の出来事だった。
音も立てずにドアの蝶番を小型電動ドライバーで外し、出来た隙間にバールを捩じ込んだ。
梃子の要領で動かすと、簡単にドアがそっくり外れ、素早く大型カッターでドアチェーンを切断した。
ドアは音を立てて廊下に倒れた。
洪は、ドアに特殊バールが差し込まれた時点で襲撃を察知し、直ぐさま処分しなければならない書類等に火を点けた。
彼は机から回転式拳銃を取り出し、反射的に窓から外へ脱出しようとした。
それが洪の運命を決めてしまった。
裏手に潜んでいた二人の男が、窓から飛び出て来た洪をあっという間に組み伏せ、彼の首筋に注射を射った。
洪は悲鳴を上げる間もなく気を失った。
西武池袋線中井駅から十五分ばかり歩いた場所で、路地一本中に入っただけですっかり人影が無くなる。
洪を監視していた人間達は、アジトの半径三十メートル四方の辻々に人間を配置した。
現場から更に百メートルばかり離れた場所に停めてあった別なワンボックスカーが、ゆっくりと走り出した。
後部座席には二人の精悍な男が、全身黒ずくめの格好に身を包み、手袋までし始めた。
「手際よくやれ。いいな」
助手席に座っていた男が、振り向きもせず、じっとフロントガラスの前方を見据えたまま言った。
車はゆっくりと路地伝いに洪が入って行ったアパートの裏手へと近付いた。
同時に別の二人組が物陰から現れ、アパートの正面入り口に向かった。
正面側の二人は、手に特殊なバールと大型カッターを持っていた。
それはあっという間の出来事だった。
音も立てずにドアの蝶番を小型電動ドライバーで外し、出来た隙間にバールを捩じ込んだ。
梃子の要領で動かすと、簡単にドアがそっくり外れ、素早く大型カッターでドアチェーンを切断した。
ドアは音を立てて廊下に倒れた。
洪は、ドアに特殊バールが差し込まれた時点で襲撃を察知し、直ぐさま処分しなければならない書類等に火を点けた。
彼は机から回転式拳銃を取り出し、反射的に窓から外へ脱出しようとした。
それが洪の運命を決めてしまった。
裏手に潜んでいた二人の男が、窓から飛び出て来た洪をあっという間に組み伏せ、彼の首筋に注射を射った。
洪は悲鳴を上げる間もなく気を失った。