1970年の亡霊
 山井とは同期で警察庁へ入庁。公安畑に入ったのも同じ時期で、自然と互いの存在を意識するようになった。

 今のところ、出世レースは五分。差が出るとすればこれからだろう。

 南雲の担当する課は、国内のテロ活動を監視、阻止し未然に防ぐセクションだが、対象組織によっては専従の班と捜査、監視が重複するケースが少なくない。

 特に十五年前に起きた、カルト宗教団体による毒薬散布無差別テロがあってからは、その専従班が出来たし、北朝鮮に関しても、拉致問題が明らかになってからは、同様に専従班が設けられた。

 これらのセクションが、相互に情報交換し、捜査監視に当たればいいのだが、警察内部の縄張り意識は、こんなところでも足枷になる。

 互いの組織長がライバル意識を持っていれば、弊害ばかりで何等、利はない。

「一応、君の意見に則り、警戒監視レベルを3にしよう。実際に怪しい動きがあって、うちが出動するといった場合には、山井の班に足を掬われるなよ」

 河津は腹の中を読まれないよう、表情を変えず南雲の前を立ち去った。

 自分のデスクに戻った河津は、突き返されたリポートを改めて読み返した。

 レベル3だと?

 5でもおかしくないのに、せめて4にするのが普通だろうが……

 何事にも事なかれ主義の南雲に、河津は苛立ちと落胆を覚えた。



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