1970年の亡霊
予想外の侵入者に、男は驚いた表情を見せたが、それもほんの一瞬の事であった。
即座に男は腰を屈め、三枝に身構える余裕を与えず体当たりをして来た。
男の肩が三枝の鳩尾に入った。
まだ治り切っていない肋骨に衝撃が走る。
悲鳴を上げようにも、余りの激痛に却って声が出なかった。
玄関先に倒れ込んだ三枝に馬乗りになった男は、長い髪の毛を鷲掴みにして、土間へ何度も後頭部を打ちつけた。
三枝は無我夢中で手足をバタつかせ、何とか抵抗しようとした。しかし、手足を動かせば動かすほど、身体のあちこちに痛みを感じた。
三枝の身体が宙に浮いた。
玄関の土間から引き摺り出された三枝は、必死に近くのものにしがみ付こうとした。
揉み合っているうちに、台所の物が音を立てて床に落ちた。
三枝は、手にチクリと痛みを感じた。
床に落ちた包丁の刃先で、掌を切ったようだ。
男は三枝の襟に手を巻き付け、柔道の奥襟固めのように締め上げた。
呼吸が止まる。血の気が引き始め、三枝の顔がどす黒く変わって行った。
意識が落ちる寸前、無意識のうちに拾い上げた包丁を巻かれた腕に突き立てていた。
即座に男は腰を屈め、三枝に身構える余裕を与えず体当たりをして来た。
男の肩が三枝の鳩尾に入った。
まだ治り切っていない肋骨に衝撃が走る。
悲鳴を上げようにも、余りの激痛に却って声が出なかった。
玄関先に倒れ込んだ三枝に馬乗りになった男は、長い髪の毛を鷲掴みにして、土間へ何度も後頭部を打ちつけた。
三枝は無我夢中で手足をバタつかせ、何とか抵抗しようとした。しかし、手足を動かせば動かすほど、身体のあちこちに痛みを感じた。
三枝の身体が宙に浮いた。
玄関の土間から引き摺り出された三枝は、必死に近くのものにしがみ付こうとした。
揉み合っているうちに、台所の物が音を立てて床に落ちた。
三枝は、手にチクリと痛みを感じた。
床に落ちた包丁の刃先で、掌を切ったようだ。
男は三枝の襟に手を巻き付け、柔道の奥襟固めのように締め上げた。
呼吸が止まる。血の気が引き始め、三枝の顔がどす黒く変わって行った。
意識が落ちる寸前、無意識のうちに拾い上げた包丁を巻かれた腕に突き立てていた。