1970年の亡霊
「手袋……と言っても公務中じゃないから持ってないか。やたらにその辺の物に手を触れない方がいいわよ。で、それ何処に?」

 三枝は、台所の隅にあったと、落ちていた場所を指差した。

「多分、揉み合っていた時に飛んだのでしょう」

「見せて」

 手に取ると通話中になっている。

 耳に当てると、ツゥーと切られた状態になっていた。

 三山はハッとした。

 共犯者の可能性……。

 ゼロでは無い。

 侵入者は死んだ男一人だけかも知れないが、ひょっとしたらアパートの周辺に見張り役が潜んでいた可能性も考えられる。

 三枝から連絡を受けて、既に一時間近い。

 という事は、共犯者は逃げたか?

 いや、まだこのアパートをじっと監視しているかも知れない……

「ケータイで外から指示を受けていたのでしょうか?」

 三山は突然メモリースティックを抜き、パソコンを小脇に抱えた。

「三枝君、一先ずここを出ましょ」

 三枝も何かを感じ取ったようだ。

「その前に……」

 と言って、三山は自分のケータイを取り出した。

「夜分すみません、三山です……」

 彼女が掛けた相手は、加藤であった。

< 85 / 368 >

この作品をシェア

pagetop