1970年の亡霊
「昔の同僚の見舞いに来ちゃいけねえか」

「何か、まだ面会謝絶みたいですよ。それよりも、ちょっと耳に挟んだんですが、事故死した三山さんの元部下だった女性捜査官……今回の襲撃事件と関係があるんですって?」

「お前、それ何処で聞いた?」

 池谷は思わず心の中でほくそ笑んだ。

 引っ掛かった……

「ネタの出処はチャックするのは、ブンヤの鉄則でしてね」

 そう言いながら、池谷は自分の口を指で横に引く仕草をした。

「ふん、聞いたような事抜かしやがる」

 そう言い残して加藤は池谷から離れようとした。

「加藤さん、いい関係になりませんか?ネタ、あるんですよ……」

 加藤の反応を探るような視線だ。

「相手、間違えてねえか。今の俺に交換するようなネタなんて欠片もねえぜ」

「君津のヤマ……」

 足を止めた加藤が、睨みつけるような眼差しを見せた。

「てめえ、何を知ってるってんだ?」

「へへへ……これから先の話は、加藤さん次第になります」

「腐れブンヤが……」

 この時の二人のやり取りを、ロビーの片隅に居た瀧本達がじっと見ていた。

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