1970年の亡霊
 所轄の連中の視線を感じた加藤は、まずいなという表情を見せた。池谷もそれを察し、

「加藤さん、ここじゃあ何ですから、場所を変えませんか?」

 と、持ち掛けた。

「野郎と密会する趣味はねえ」

「屋上があるみたいですから、先に行ってますよ」

 有無も言わさぬ言い方で、池谷はすたすたとエレベーターへと向った。

 君津のヤマだと?

 ふん、たかがブンヤ風情が……

 どうせガセネタだろうが……

 そう思いはしたが、丸っきり気にならない訳ではない。

 意味も無く、煙草が吸いたいと思った。

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