海風~駆け抜けた青春~
「ねぇ。線香花火で勝負しよう!」
「良いねぇー。いっちょやったりますか。」
大地が指を鳴らす。
「負けた人、ジュース奢りで。」
美空が一本取る。
「ずるすんなよ。」
陽があたしを見て言う。
「あたしは、正々堂々戦うよ。ずるするのは大地でしょ。」
「でも、こういう賭をしてる時って、いつも美空が何か仕掛けてくるんだよな。」
「大地、あたしに喧嘩売ってんの?」
「すみません。」
美空の睨みで、大地が一回り小さくなる。
「よーし。みんな、花火持ったね。じゃあ、一斉に火、付けるよ。」
あたし達は、せーのの掛け声で線香花火に火を付けた。
今思えば、高二の夏は、線香花火のように一瞬の輝きを帯びていた。