海風~駆け抜けた青春~
「海波さんの成績はこの通り、良い、とは言えないですが、平均的にとれていますよ。」
「お恥ずかしい限りです。何て言って良いか…」
お母さんは、肩を落としている。
「まぁ、あと一年ありますし。海波さんはまだ伸びますよ。」
あたしは窓の外を眺めてる。
陸上部が、夏練でトラックを風を切って走っている。
「ちょっと、海波。先生のお話聞いてるの?」
ゆっくりと視線をお母さんに向ける。
「あぁ…なんか、思いっ切り走ってて、気持ち良さそうだなーって。」
「もう!何を言ってるの。自分のことなんだから、もう少し自覚を持ちなさい。
すみません、先生。」
「良いですよ。毎日楽しそうに過ごしてますよ。」
40半ばを過ぎたあたしの担任、篠塚奈津子[シノヅカ ナツコ]が、皺の増えた顔を崩し太陽のように微笑んだ。