海風~駆け抜けた青春~
「海波ちゃん?美空の母です。お祭りの途中にごめんなさいね…落ち着いて聞いてもらえる?」
------
----
--
「えっ…今、何て言いました?」
「美空、今日が山だって…お医者さんに言われたの…」
「どうして…突然…」
あたしの手は震えていた。
「突然でもないのよ…最近、体調良くなかったでしょう?
家で休ませてたんだけど、今日、倒れちゃって…」
何?
おばさん、何言ってんの?
「それで病院…---」
だんだんと、おばさんの声が遠退いていく。
ずっと平気だったのに、今頃になってどうして…
美空っ!--
「--…本島の中央病院にいて、まだ目を覚まさないの。」
美空がいつもの病院にいることを聞き取れたあたしは、携帯電話を握り絞め、無我夢中で、今来た道を駆け出した。
浴衣が乱れる。
セットした髪もぐちゃぐちゃ。
全力で駆けるあたしを陽と大地が呼び止める。
でも、今のあたしにその声は届かない。
大輪の花火を背に、真夏の夜を駆け抜ける。