―you―
「結婚式はいつなんですか?」
 俺は唐突だとは思いながら聞いてみた。
「いつ?千尋」
「いつだろうな」
「決まってないんですか?」
「なかなか話を進めてくれないのよ」
「結婚したら、今の生活とどう変わるんだ?」
「私の苗字が変わって、千尋に扶養されるの」
「今とあまり変わらないじゃないか」
「保険とか税金とか」
「十河さん、結婚したくないんですか?」
 ぽろっと口から出た言葉は、あまり望ましくない処に転がっていったようだ。一瞬、空気が止まった。
「何を言うのよ、優ちゃん。そしたら私、ここに居ないでしょう?」
 奈緒さんは怒りも柔らかく伝える。
「そうですよね。失礼しました」
 ただ笑うだけで、何も言わないあなたを怖いと思った。
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