―you―
6 限界を感じてもやめられない訳がある

 君が主役を務めるという話を聞いた。と言うか、新聞の広告欄に宣伝が出ていたのを見たのだが。
 奈緒がカレンダーと睨み合いをして、はや15分。膨らんだ腹を撫でながら、いつ劇場に行こうかと考えている。
 奈緒、どこかで気付いているんだろうか。私と優の繋がりを。
 確かに奈緒は愛している。彼女の中の、新しい命の誕生は私も楽しみだ。
 でも、愛おしくてたまらないんだ。優。


「18日は?」
「え?」
「しっかりしてよ、パパ」
 この日。
 奈緒は赤いペンで来月の18日を指す。すでに赤く二重丸されてある。
「奈緒の誕生日だろ」
「そ。市役所行って、それから劇場。どう?」
 市役所行って、つまり婚姻届を出して。
 何を考えているんだか。
「大事な日だからダメ」
「どうして?」
「そんな大事な日のスケジュールを、奈緒には決めさせない」
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