―you―
2 歌を歌おう、あなたのために私のために


 あなたのことが気になったのは、あなたが座っていたから。

「あの、」
 俺は舞台衣装もそのままであなたを探して、話しかけた。
「…え…モーリス?」
「モーリス役の天野優です」
 自己紹介をして、お辞儀をする。
「で…何の用?」
「今日の舞台はどうでしたか?」
「…何で私に聞くんですか?他の人に」
「どうでしたか?」
 俺とあなたの回りには既に何重にも人の輪が出来ている。当たり前だ。俺はモーリスだから。
「時間、大丈夫ですか?」
「まあ…」
「じゃ」
 俺はあなたの腕を取って、控え室を目指した。


「優、何だ勝手に」
「すみません」
「おい優、そのままの格好で外出たのか」
「天ちゃん、打ち上げは八時からこの前の処ね」
「はい」

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