Broken†Doll

鳥達の囀[さえず]りと、メイド達の騒がしい足音に気付き、彼女は目を覚ました。

湿度は保たれているが、今は冬と春の間[はざま]という季節の朝だけあって、鼻の上を寒さが刺す。
はっきりと見開けていない目を擦って辺りを見回し、壁にかけられている登場を見た。

時効は6時21分。モーニングコールより9分早く起きてしまった。

部屋の主[あるじ]が起きたことに気付き、一人のメイドが入ってきた。

「おはようございます、エレナお嬢様。今日はお目覚めが早いですね」

メイドはフリフリとした長いスカートをたくしあげ、せっせと働いている。

エレナと呼ばれた部屋の主は、メイドに手伝う隙を与えない程早く、そして綺麗にフトンを畳み、白くフカフカで、無駄に広いベットから降りた。

床暖房ではあるが、素足ではやはりさむい。

「おはようございます。今日もあさからアキコさん達は大変ですね」

メイドのアキコに挨拶と気遣いの言葉を返し、大きな窓の前に立った。

カーテンの隙間から注ぎ込んだ朝日の光が、エレナの白く美しい頬を照らした。
アキコもそれを見てにっこり微笑む。

「今日も良い朝‥‥‥」

「ぁあ!!エレナお嬢様はそんな薄着をして‥‥‥!春が近いと言っても、まだ気温は低いのですから、それではお風邪をおひきになりますよ」

慌てたアキコは、エレナの肩にカーデを掛けた。

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