Broken†Doll
「今日は一日晴れ。気温は12℃で午後にはもう少し上がりますわ。何か紅茶などをお飲みになりますか?」

設定していた時効の30分になり、部屋の目覚まし時計のアラーム音が鳴り響く。

「ええ、いただきます」

アラームを止め、エレナな窓を全開にし、全身で空気を吸った。


今日もまたおかしな夢を見た。最近ずっとその夢ばかりだ。
自分が見たその夢の衝撃で、枕が涙でびっしょり濡れる日も時々ある。

その夢とは、エレナが人形であり、全く自由を与えてもらえない、苦しいだけの日々を過ごすという夢だ。

そのせいか、最近エレナはモーニングコールよりも早く目覚めるようになった。

「お嬢様、アップルティーでございます。甘さも控えめで、さっぱりしてますし、今日も一日仕事に集中できますよ」

見るからに高そうなティーカップに注がれたアップルティーが、ワゴンに乗せられ運ばれてきた。

「ありがとうございます。
‥‥‥これは、イギリスの高級茶器ですね。もしかして、父か兄がイギリスへ旅行なさった時のお土産か何かでしょうか」

「はい、そのようです。この紅茶も高級で、数少なく、入手が大変困難ですとか‥‥‥」

‥‥‥また父や兄の無駄遣い。前回も同じデザインのような茶器を買っていた気がする。

それもそのはずだ。
エレナの家は、超がつく程の大金持ちで有名でもあるのだ。

エレナの父、嬢乃輝明は有名な大企業の社長を務めており、いくつもの会社を従えている。しかも、嬢乃の名をもらった一族、親類も、企業で大変高成績を納めているのだ。

つまり、エレナな嬢乃グループの社長令嬢ということになる。

そしてエレナの母、ソフィーはイギリスの生まれで大変美しく、この方も大企業の家で暮らしていた。

体が弱く、あまり人前に出ようとしない人柄である。

その後、輝明の妻となって、嬢乃の名を受け継いだのだ。

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