イケオタ
「はぁ、はぁ、はぁ〜・・・
やっと捕まえたわ」

息を切らしながら右手には奈瑠の服がガッシリと捕まれている

「か、神崎・・・
服放してくれないかな?」
「放したらまた逃げるんでしょ
そうはいかないわよ」

「いや、そうじゃなくて・・・しょうぅぅ〜」

助けを求める奈瑠に翔は仕方なく救いの手を差し延べた

「神崎は奈瑠が好きだから放したくないんだよなぁ〜」

いやみっぽくニヤニヤしながら翔が一言発した

すると神崎は長い髪が頭の動きに着いていけず遅れて来るほどの勢いで翔の方へ振り返った

「なっ!!
ちょ、ちょっとあなた何でたらめ言ってるのよ!!」

「冗談だよ冗談
そんなに怒んなよ
あっ!!
それとも図星だった」

ニヤニヤする翔に少し言い過ぎだと奈瑠は注意しようとしたが、それよりも先に震えた声で神崎が口を開いた

「・・・てい」

「えっ!?」

「最低!!」

大声で叫んだ神崎の瞳には涙が今にもこぼれ落ちそうなくらいに溜まっていた

そして神崎はその場から走り去った

「翔・・・」

「しょょょぉぉぉ〜!!」

奈瑠と結衣花に攻められた翔はうなだれた

「・・・言い過ぎました」

静まりきった店内に翔の反省の言葉が虚しく消えていった・・・
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