甘酸っぱい彼
朝のミーティングが終わって、あたしは校舎に囲まれた中庭のベンチに座り優雅の事をボーっと考えていた。中庭は荒れていてゴミばっかり。とても落ち着かない場所だったけど一人になるには最適な場所だった。端っこの方にヤンキーたちがいて、こっちを見てきているけど、そんな事も気にならなかった。
「優雅・・・大丈夫かなぁ・・・。」
一人でため息交じりに呟いているとヤンキーが三人ほど近づいてきた。
「ねぇ、君。可愛いね、名前は?」
「・・・。」
「彼氏とかいるの?」
「・・・。」
「なんで男子校に来たの?」
「・・・。」
どんどん話してくる三人を無視して、あたしは立ち上がり教室へ戻ろうとすると、腕を掴まれた。
「放してください!」
「そんなこと言わないで遊ぼうよ~。」
「嫌です!放してください!」
あたしは瞳に涙をためて叫んだ。いくら引っ張っても男の人の力には敵わない。あたしはもう限界で涙を一粒流した。すると・・・
「なぁ。放してやれよ。嫌がってんの、わかんねぇの?」
後ろから声が聞こえてあたしは振り向いた。そして、びっくりした。

・・・っ! 今日の朝、目が合った人だ・・・。なんで、助けに来てくれたの?

「なんだ?お前。喧嘩売ってんのか?」
「なめてんじゃねーぞ!オラァ。」
ヤンキー達はキレてしまい、目をつり上げている。
「喧嘩売ってるとは誰も言ってないだろ。・・・はぁ。まぁ、仕方ないか。・・・お前達ヤンキーは馬鹿の集団だもんな。」
そう言うとその人はあたしの腕を掴んで後ろに下がらせた。どんどん危険な雰囲気になっていく。
「まぁ。俺は穏便(おんびん)に済ませたいから。んじゃ、失礼する。」
その人はあたしの腕を引っ張って校舎へ戻ろうとした。
「ちょっと待てコラァー!」
ヤンキーの一人がそう言うとその人を後ろから思いっきり殴った。殴られた拍子にその人の眼鏡は割れてしまった。

ちょっと・・・。これ、やばいよ・・・。だって、この人の顔っ・・・!
< 12 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop