甘酸っぱい彼
カラオケボックスに入るとガンガンといろんな雑音が聞こえる。久しぶりってのもあるけど・・・耳が痛いよ・・・。桂太郎は一つの部屋に入るなり、大きな声で中にいるメンバーに話しかけた。
「はいはいっ! 一回ストップ~。・・・百季ちん来よったで!」
みんなの視線が一気にこちらに向く。すると一人の女の子が桂太郎に近づいて・・・抱きついた!?
「けいたろーっ!待ってたよー!」
あっ、桂太郎の彼女か・・・。てか、可愛い・・・。
「香奈っ!百季ちん来てくれたで。 この子が百季ちんや。」
「百季ちゃんっ!あなたがっ!・・・可愛い~。 あたし、峯川香奈(みねがわかな)っ。よろしくねっ!」
香奈ちゃんはそう言うとあたしに抱きついてきた。あたしはバランスを崩して壁に頭をぶつけた。香奈ちゃんの頭のてっぺんで束ねたお団子が顔にかぶさる。
「ちょっと!香奈っ!初対面で人に抱きつくなって何回いったらいいの!?・・・ごめんね、百季ちゃん。 あたしは岡崎菜生(おかざきなお)。菜生って呼んでっ!」
顔がふさがれたのを巻き巻きで下ろしてる子が助けてくれた。く・・・苦しかったぁ。
「ほんと、ごめんなぁ。香奈は抱きつくのが癖なんや。・・・彼氏からしたらやめてほしい癖や・・・。」
桂太郎は下を俯きながら笑ってる。でも、なんだか優しそうな子たちでよかったって思った。とても面白いし、友達になれそう・・・。


あたしたちはしばらくそんなやり取りをした後、再び歌い始めた。・・・とは言っても、あたしは歌わないで皆が歌ってるのを眺めてる。桂太郎と香奈ちゃんは二人で寄り添いながらラブソングを歌ってた。香奈ちゃんと菜生ちゃんは明るくてポップな歌を踊りながら歌ってる。祐介と桂太郎は切ない感じの歌を歌ってる。祐介と桂太郎の歌が終わると誰も歌わなくなった。どうしたんだろうときょろきょろしてると菜生ちゃんにマイクを持たされ、立ち上げられた。動揺してると修も持たされてる・・・。すると、誰でも知ってるラブソングが流れ始めた。
「あっ・・・あたし、歌えないよぉ・・・。」
「大丈夫っ。修も一緒に歌うからっ。」
「でもっ・・・。」
隣を見ると修は呆れた感じでマイクを眺めてる。
「ほらっ!始まるでっ!」
「歌いなさいよっ♪」

ど・・・どうしよう。緊張して・・・歌えないよぉ。
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