甘酸っぱい彼

包まれる不安

「失礼します。」
-ガラガラ-
ドアが音を立てる。
あたしは気持ちを弾ませて中へ入った。
―シンッ―
一瞬時間が止まる・・・。そこに映った光景は・・・。


「なに・・・これ・・・?」
あたりは男子だらけ・・・いや、男子だけだった。周りからはたちまちざわめきが上がる。
「なんだ、あいつ。」
「なんで女!?」
「ここ、男子校だよな?」
「うけるっ。間違えちゃったかなぁ?きゃきゃきゃ。」
「ミニスカ萌え~。」
いろんな会話が聞こえてくる。視線だって冷たい視線や鋭い視線が向いてる気がする。

なんで、男子校・・・なの?
お父さんはそんなこと言ってなかったじゃん・・・。
まさか、わざと言わなかったの・・・?
あの人なら・・・やりかねない。
でも、なんで?なんであたしを男子校に入れた?

いろんなことを考えているとあっという間に時間は過ぎて、下校時間になってしまった。
帰りの支度をしていると3人組の男子たちが周りを囲んできた。
「ねぇ、君、名前は?」
「相沢百季(あいざわゆき)」
「可愛い名前だね。」
「今から一緒にカラオケにでも行かない?」
面倒なことに巻き込まれちゃったな、と少し顔をゆがめながらあたしは適当に返事を返した。
「結構です。すぐ帰りたいので。」
「いいじゃんいいじゃん。転入祝いってことでさぁ。」

しつこいなぁ・・・。
他の女の子誘えばいいじゃん・・・ってここ男子校だから、あたししかいないのか。
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