甘酸っぱい彼

はぁ・・・優雅、大丈夫かなぁ・・・。優雅があんなにだるそうなのは久しぶり・・・。
確か・・・あの日以来だ・・・。父親が・・・、父親があたしたち家族を見捨てた日以来・・・。優雅が初めてあたしたちの前で怒ったんだ・・・。そして・・・泣いたんだ。

あたしは優雅のことと過去のことをずっと考えながら学校についた。気分重々しく教室のドアに手をかけようとしたら上から手か出てきて、手でドアが開かれた。びっくりして後ろを振り向くと昨日散々と暴言を吐いてきたあの彼がいた。
「あ・・・あなたは・・・。」
あたしがそこまで呟くとあの透き通った目で彼は見てきた。
「早く入ってくんない？邪魔なんだけど・・・、それに俺。あなたじゃねーし。」
「ごっ・・・ごめんなさいっ！・・・なんて呼べば・・・？」
「はぁ・・・？俺の名前は宮藤修（くどうしゅう）。好きに呼べ。」
相変わらずのツンツンした態度にあたしの心臓は恐怖で悲鳴をあげてる。

この人ってもっと優しければもっとモテるんだろうなぁ・・・。あたしだってこの瞳に吸い込まれそうなのに・・・態度がこれだと・・・ねぇ・・・。

なんて一人で心の中で呟いた。
「じゃぁ・・・宮藤さんで・・・。」
抑え気味に・・・そして、なれなれしくならないようにあたしは言った。しかし・・・
「馬鹿か？お前、それキモいから止めろ。・・・修でいいから。」

また・・・暴言。

「わかりました。すいませんでしたっ。」
会話が終わって、宮藤さん・・・じゃなかった・・・。修はあたしを横切ると教室に入って行った。あたしもいそいで中へ入ると教室中の視線が一気にこちらへ向いた。ビクビクしていると修が戻ってきて頭を掴んだ。
「・・・痛っ！」
「なにモジモジしてんだよ。お前は幼稚園児か。」

よ・・・幼稚園児って・・・どんだけ小さいのよっ！・・・んでも、こんなこと言ったら何言われるかわからないし・・・だまっとこ・・・。