いちごのひみつ
重要な日はたいてい雨
「ついに来てしまったし着てしまった……」


春の雨が桜を散らせる肌寒い日。


初登校日の清陽高校正門前。


ブレザーを着てスカートを履いて


そう呟くわたしがいた。


雨音がシンバルみたいに聞こえる。


---・---・---


「お。結構似合ってるじゃない」


師匠は無責任にそんなことを言って


けらけら笑いながら、わたしの頭を


わしゃわしゃと撫でる。


そして急に真面目な顔をして


「いちごの気持ちも解るけど


やっぱ学歴は大事だって。


選択肢はたくさんあった方がいいよ」


そう諭すように言った。


そんなことを言う師匠は


無駄に美術の教員免許を持っている。


「あ。それと親に感謝しないとね」


少なくとも20歳の娘を


全日制の私立高校に入れる親に


どう感謝したらいいのか解らないけれど


心配してるのは……凄く解った。

---・---・---


「よしっ…!!」


わたしは気合いを入れ直す……というか


半分やけくそになって


たっくさんの15歳に囲まれながら


正門をくぐった。
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