いちごのひみつ
職員室への道のりは


無駄に難解だった。


歴史がある校舎だか何だか知らないが


陣取りゲームのように


やたら増改築を繰り返して増殖している。


キョロキョロしていたら


後ろから声をかけられた。


「どうかした?」


振り返ると


スーツ姿の青年が立っていた。


「あ……あの、職員室を探していて……


あの……わたし山野です」


「あぁ! 君が山野さんか!」


青年は何か納得したように


声のトーンを上げると


「僕は野田。ここの先生だよ」


そう言って


手に持っていた出席簿を少し上げて見せた。


「あ……じゃあ君が20歳の……」


「あのっ!!」


触れられたくない話題に


思わず裏返った声が出る。


このコスプレ姿の事実は勿論


教員全員に知られているけれど


こんな若い……正直年齢の近そうな


先生に見られるのは恥ずかしい……。


「しっ……職員室は……」


「あ。ごめんね。案内するよ」


そういうと野田先生は


全く反対の方向へと歩き出した。


……わたし、ひとりじゃ


絶対辿り着けなかった気がする……。
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