Impression~心の声
よりどころが欲しかった。誰でもいい、解ってもらいたかった。そんな感情が知らず知らずのうちに私を覆いかぶさろうとして行くことに、私は目を背けようとしていた。
 朝食を食べ部屋に戻る。そしてまたパソコンを立ち上げる。いやな思いを沢山したはずなのに。私は導かれるようにまた同じことを繰り返した。だけどどこか違っていた。今までに無い感覚が私の中に微かに存在していた。まるで目覚めてすぐ忘れてしまった夢のように、はっきりとではない、だけど確かな胸の温かさを、私はたしかに感じていた。それは不思議な感情だった。この感情はどこからわいてくるのだろう。
ふと思い出す、昨日のいさむとの会話を、いさむの声を。私はもう一度聞きたかった、彼の声が。話したかった。彼ともう一度・・・。たわいも無いことでいい話がしたかった。 
 誰かが私のところにログインしてくる時も、そしてその誰かと話をしている時も、私はどこかで彼を思った。部屋に一人でいる時に何気なく琉球ガラスについて調べることもあった。何が私にそうさせているのかなんて、私自信が解らないことだった。
 だけど一つ、よかったことがあった。〝ガラス″の美しさを知れたということ。私はその美しさを知らずにいたのだから、まだ写真でしか見てはいなかったが、私はその美しさを本物だと感じた。
何もかも吸い込んでしまいそうなくらい透き通る青。
 夕焼けのように光るオレンジ。
 空に伸びようとする力強いひまわりのような黄色。
 星のように輝くピンク。
 その全てを私は好きになった。
 この透明なガラスたちは、全ての職人の心を本当に映し出しているのだろうか。私はパソコンの画面を見つめながら、いさむの言葉を思い出していた。顔すら見たこと無いいさむ、にどうしてここまで影響をうけているのかなんて私は考えもしなかった。
 窓を開け空を眺めた。沖縄はどのくらい遠いいのだろう、だけどこの空が繋がっているのは確かだった。何時しか私は待ちわびた。いさむのログインを。
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