Impression~心の声
そして、もう一度。
いさむ「この二つを聞き間違ぇたのではないかって言う説があるんだ。」
香織 「勘違いで新しいお話ができちゃったの?」
いさむ「現に毛皮の靴が登場するシンデレラ物語のような昔話は存在しているんだ。聞き間違いでないにしても、ペローが話を面白くするために変えたものとも言われてる。」
 私は頷きながらいさむの話を聞いた。大好きな、いさむの声を。
いさむ「だけど、一方でガラスで間違いないという意見もあるんだ。実際にはくことはめったに無いが、ガラスや推奨で作られた靴の置物が、シンデレラ物語以前からあったから、またシンデレラの存在を〝壊れやすい物″としてガラスを使う昔話もあるという。」
香織 「真実はどっちなんだろう。」
 知りたくても知ることの出来ない真実はこの世界にどれだけ存在するのだろう。人々はそれをどう理解してこの世界を作り上げてきたんだろう。そしてそれを乗り越えてきたのだろう。そんなこと昔から知っていたはずなのに。それがとても不思議な物に感じ、それと同時に虚しさを感じた。
香織 「ねぇ、どっちなの?本当のことは?」
 いさむは少し間を置いてから答えた。
いさむ「うんペローが間違えたのか、意図的に変えたのかは、長年論争が続いているが、いまだに決着はついていないんだ。」
香織 「と言うことは、もう、タイムマシーンでもない限り、本当のことを知ることは誰もできないの?」
いさむ「そうなのかもしれないね。」
 その言葉がとても寂しく感じた。投げやりで無責任で。
 誰が悪いはずでもないのに。
香織 「どうして、どうして解らないの?」
 いさむが少し困っているようだった。
いさむ「ごめんね。」
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