Impression~心の声
優しい声で、いさむはこんな私を慰めた。
今こうして私はいさむと繋がっている。たった2回しか話したことのない顔すら知らない彼と。滲んだ真実、ぼやけてしまった真実を誰も確認することはできない。やりきれない思いはどんなふうに消したらいいのだろう。きっとそんなこと誰も教えてくれないだろう。私の過去の真実も本当のいきさつを人々に教えることはできない。誤解を解くすべはもう存在しない。そう思うと胸が痛かった。苦しかった。
香織 「違うお話をしよう。」
わがままなのは解っていた。だけど今の私にとって唯一甘えることのできる存在が彼だけだった。
いさむ「違う話?どんな話がいいのかなぁ。」
そんな私の無理な言葉にいさむは真剣に答えようとした。
香織 「最後まで結末のわかるお話。」
少し考えるといさむは私に質問をした。
いさむ「海外には行ったことある?」
仕事で何度かって答えようとしたけれど、私は一度も無いと答えた。またこれも嘘なのかもって、少しの嫌悪感を感じながら。
香織 「いさむ君は?」
逆に私は彼に質問を返した。
いさむ「ヨーロッパの方に行っていた時期がある。」
意外な答えについ私はその地方の名を復唱してしまった。
香織 「ヨーロッパ?」
いさむ「うん。ガラスを見にね。その時の話でもいいかな?」
香織 「うん、聞きたい。」
そう言って私はパソコンのモニターの前で頬杖を付いた。
いさむ「じやぁ僕がチェコを旅した時の話でいいかな?」
私はカメラ越しにこくりと頷いた。すると彼は話の続きをゆっくりと始めた。
いさむ「チェコのプラハにガラスを見に行って来たのは5年前の7月のことだった。僕は7月中旬に成田を発ちヨーロッパでのベースキャンプがあるスイスのチューリッヒに向かったんだ。その年日本では冷夏だったから、薄手のジャケットを持って行ったんだけど、ヨーロッパは凄い猛暑でジャケットの出番は一度も無かった。フランスなんかじゃぁその猛暑でワインの出来も良さそうだって話だったけど。チューリッヒに着くと、雨も少なかったみたいで、空港の滑走路脇の草原や芝の緑は枯れはて一面が茶色になっていたのを今でも覚えている。」
私は目を瞑った。いさむが与えてくれる記憶の中にすっぽりとはまってしまいたかったから。
今こうして私はいさむと繋がっている。たった2回しか話したことのない顔すら知らない彼と。滲んだ真実、ぼやけてしまった真実を誰も確認することはできない。やりきれない思いはどんなふうに消したらいいのだろう。きっとそんなこと誰も教えてくれないだろう。私の過去の真実も本当のいきさつを人々に教えることはできない。誤解を解くすべはもう存在しない。そう思うと胸が痛かった。苦しかった。
香織 「違うお話をしよう。」
わがままなのは解っていた。だけど今の私にとって唯一甘えることのできる存在が彼だけだった。
いさむ「違う話?どんな話がいいのかなぁ。」
そんな私の無理な言葉にいさむは真剣に答えようとした。
香織 「最後まで結末のわかるお話。」
少し考えるといさむは私に質問をした。
いさむ「海外には行ったことある?」
仕事で何度かって答えようとしたけれど、私は一度も無いと答えた。またこれも嘘なのかもって、少しの嫌悪感を感じながら。
香織 「いさむ君は?」
逆に私は彼に質問を返した。
いさむ「ヨーロッパの方に行っていた時期がある。」
意外な答えについ私はその地方の名を復唱してしまった。
香織 「ヨーロッパ?」
いさむ「うん。ガラスを見にね。その時の話でもいいかな?」
香織 「うん、聞きたい。」
そう言って私はパソコンのモニターの前で頬杖を付いた。
いさむ「じやぁ僕がチェコを旅した時の話でいいかな?」
私はカメラ越しにこくりと頷いた。すると彼は話の続きをゆっくりと始めた。
いさむ「チェコのプラハにガラスを見に行って来たのは5年前の7月のことだった。僕は7月中旬に成田を発ちヨーロッパでのベースキャンプがあるスイスのチューリッヒに向かったんだ。その年日本では冷夏だったから、薄手のジャケットを持って行ったんだけど、ヨーロッパは凄い猛暑でジャケットの出番は一度も無かった。フランスなんかじゃぁその猛暑でワインの出来も良さそうだって話だったけど。チューリッヒに着くと、雨も少なかったみたいで、空港の滑走路脇の草原や芝の緑は枯れはて一面が茶色になっていたのを今でも覚えている。」
私は目を瞑った。いさむが与えてくれる記憶の中にすっぽりとはまってしまいたかったから。