Impression~心の声
約束の日はすぐに訪れた。私は最後にもう一度飛行機のチケットを確認して、家の玄関のドアを開けた。母親には一週間ほど家を空けるとだけ言って。ずっと昔を思い返しても、私は一人旅をしたことが無かった。初めての一人旅、緊張と興奮が私を襲う。だけどそれは悪い感覚ではなかった。心地よく私は最初の一歩を踏み出した。
 タクシーJRを乗り継ぎ私は空港に到着した。飛行機も久しぶりだった。あと、3時間後に勇に会える。
 鼓動の高鳴りは抑えられなかった。どんな人なんだろう。どんな顔をしてるのだろう。期待した。こんな期待する必要ないはずなのに。
 飛行機は時刻通りに旅立った。私はイヤホンを耳にさし、最新の音楽を聴きながら雲の上の世界を見下ろした。雲はそこに降り立つことが出来るのではないかと思わせるほど、平らで、柔らかそうで、とても厚いものだった。ここから飛び降りたら、ふわふわの雲の上で弾みとても居心地のよい世界を味わえるような予感さえした。そんなことは出来っこないとわかっていたけど。私は頬杖を付き何時までもその光景を眺めていた。海を越えて。飛行機は何処までも飛んでいった。
 知らないうちに私は寝てしまった。3時間はあっという間だった。私は期待で胸がいっぱいだった。私はついに沖縄に来たんだ。
 まず私は、洗面所でメイクを直した。そして小さく目を閉じ深呼吸をした。私はこれから一週間この地で生活をするんだ。キャリーを引く手に力が入った。ロビーは人が溢れていた。広い吹き抜けの空間には南国らしくヤシの木が聳え立っていた。この中から私たちはお互いを見つけ出すことが出来るのだろうか。

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