Impression~心の声
彼は私達の所属するプロダクションの中でも地位の高い役人で、私より8歳の年上だった。私なんかよりも世の中の動きを確りと読み取っていた。あの時の私にはとっても大きな存在だった、そしてだれより頼れる存在でもあった。
私のショックは大きかったけど、何事も無く二人の時間は別々に流れていくはずだった。
だけど次の週彼は私のマンションに現れた、私は何も言うつもりはなかった、、。だけど彼は私に言った、誰のおかげでここまでやってこれたと思う?って。彼が期待している答えを私は解っていた。だけどわざと私は彼に聞き返した〝誰・・・?〟と。どうやらその言葉が気に食わなかったみたい、、彼は私の部屋に入ると一番大切にしていたお父さんの肩身のオルゴールを手にとった。
〝終わりってもんは随分とあっけない物だな、、〟彼はそういって私の大切なオルゴールを壁に叩きつけた。私がそのオルゴールを何よりも一番大切にしていたことを彼は知っていたのに。瀬戸物でできたオルゴールは粉々に砕け散り部屋中に陶器の雨を降らせた。まるでダイヤモンドダストのように壊れた破片が中を舞い、その光景は私の胸に深く焼きついた。悔しかった、とても、、、。
 気付くと勇は私の右手をぎゅっときつく握りしめてくれていた。まるでこの手が私の心の中を読み取っているような気さえした。
 私は小さくため息を付いた。
だいたいの人はこの歌の詩を読んで恋人との別れを連想していた。でもそれでよかった、聞く人が、それぞれの思いでこの歌を聞いてくれれば、私はそう思っていた。
 勇は何も言わなかった。伝わってくるのはこの右手から伝わる、ほのかな体温だけだった。
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